ナタリー PowerPush - UNISON SQUARE GARDEN

強度抜群のポップアルバム「CIDER ROAD」

結成から約9年、メジャーデビューから約5年。バンドにとっての節目の時期とも言える今、UNISON SQUARE GARDENに変革が起きている気がする。このたびリリースされる4枚目のアルバム「CIDER ROAD」が、過去類をみないほどの強度抜群のポップな仕上がりとなっているのだ。

アルバムに収録されている「crazy birthday」の歌詞を引用させてもらうと、「絶好球を引っ張らないで、流し打ちができる」。そんな状態に彼らはたどり着きつつあるのかもしれない。バンドが持つ覚悟、並々ならぬこだわりについて大いに語ってもらった。

取材・文 / 田山雄士

「なんでも挑戦していいんだな」

──ニューアルバムめちゃくちゃ素晴らしくて、びっくりしました。バンドに何かが起きてるのは間違いないと感じてるんですけど。特に3rdアルバム「Populus Populus」のあたりから。

斎藤宏介(Vo,G)UNISON SQUARE GARDEN(2012年4月21日の東京・Zepp Tokyoワンマンライブより。Photo by 森久<Hisashi Mori>)

斎藤宏介(Vo, G) ある種の開き直りというか、自分たちがやりたいことがわかってきましたね。初期はあれもこれもやりたいって感じだったんですけど、それがだんだん減ってきた。そうなることによって大切なものを意識した上でなら、なんでも挑戦していいんだなっていう気持ちになってきたんですよ。例えば3人以外の楽器——ピアノ、ストリングス、ホーンとかも全然アリで。そういう要素を使って僕らの核がよりわかりやすくなるんだったら、どんどんやっていきたいと思ってます。

──確かにホーンや鍵盤などは、今回とても効果的に入ってると思いました。

斎藤 あんなに入れたのは初めてですね。

田淵智也(B) ああいった音って自分が作ってる音楽に必要なものとして以前からずっと存在してはいたのですが、僕の頭の中だけで鳴ってたんです。今まではそれを鳴らさなくても、リスナーにイメージは伝わるかなって思ってたんですよね。だけど「伝わらないんだな」って気付いたというか。それで3rdアルバムのあたりで入れてみたんですよ。その試みをしても、チャラくは見えないくらいにバンドが成長してきてるのはわかってたので。多分ファンの方を戸惑わせるようなことも、そんなにないだろうなという考えもあったし。

──なるほど。ということは、どこか「伝わってないな」っていうもどかしさが、少なからずあったわけですよね?

田淵 なんなんでしょうね……自分の中では音が鳴ってたから、それで結構満足しちゃってたところがあったのかな。でも伝わってるかどうかなんて、憶測でしかわからないじゃないですか。やっぱりバンドを続けていくうちに、僕らに対する評価で悩んだりもして。

本質を伝えるために本気を出す

──一般的な目線を意識して言うと、UNISON SQUARE GARDENってメジャーデビューの段階から順調に見えました。いい作品がちゃんとできてたし、ライブ会場のキャパシティもどんどん大きくなっていきましたし。

鈴木貴雄(Dr) どっちかって言うと、キャパに対しての欲はあまりないんですよね。それよりも自分たちが信じてる音楽が正当に評価されてないジレンマが——特に田淵にはあるんだろうけど。

──田淵さんの発言の端々からはそんな印象を受けてました。

田淵 恐縮です(笑)。今回は曲作りの段階から自分の考えをメンバーにより深く伝えて、音に昇華させる作業を意識して制作を進めることができたんですよね。最初に「(アルバムがよくて)びっくりしました」って言ってくださったじゃないですか。僕、その言葉が一番聞きたかったんですよ。これを聴いてびっくりしてくれないんだとしたら、世の中のほうを疑っちゃうかもしれない。それくらいの気合で作ったアルバムなんです。だからその感想を聞けて、またひとつ確信が持てました。

──それだけの力作が評価してもらえないと、さすがに落ち込んでしまうかもしれないですよね。

田淵 落ち込むというか「音楽をやらなくてもいいのかな」って感じてしまうかもしれないですね。そもそも自分たちが世の中に必要だと思ってるから、音楽をやってるので。歌ってること、テーマとして掲げてること、ライブをやる意味……そういうところに反応してくれたらうれしいですね。5年後、10年後に「あのとき、あのバンドがいたおかげで、人生が楽しかった」って言ってもらえる存在になりたいです。

──すごくいいと思います。

田淵 消費社会に対してモノを提供してる職業だから、なかなか難しいんですが、消費だけをされると嫌じゃないですか。なので本質を伝えるためには、こっちも本気を出さないといけないですよね。

ニューアルバム「CIDER ROAD」 / 2013年2月6日発売 TOY'S FACTORY
「CIDER ROAD」初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / TFCC-86423
「CIDER ROAD」初回限定盤[CD] 2800円 / TFCC-86424
CD収録曲
  1. to the CIDER ROAD
  2. ため息 shooting the MOON
  3. リニアブルーを聴きながら
  4. like coffeeのおまじない
  5. お人好しカメレオン
  6. 光のどけき春の日に
  7. クロスハート1号線(advantage in a long time)
  8. セレナーデが止まらない
  9. 流星のスコール
  10. Miss.サンディ
  11. crazy birthday
  12. 君はともだち
  13. シャンデリア・ワルツ
初回限定盤DVD収録内容

STUDIO LIVE

  • シャンデリア・ワルツ
  • クロスハート1号線(advantage in a long time)
  • リニアブルーを聴きながら
  • ガリレオのショーケース
UNISON SQUARE GARDEN
(ゆにぞんすくえあがーでん)

斎藤宏介(Vo, G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)からなるスリーピースロックバンド。2004年7月に結成され、都内を中心に活動を開始する。2006年8月に1stミニアルバム「新世界ノート」をリリースし、ライブハウスおよび下北沢ハイラインレコーズのみの販売で1000枚を完売。2007年にはメンバー主催のイベントをスタートさせ、ソールドアウトの快挙を成し遂げたほか、同年12月には初の単独ライブを成功させる。2008年7月にシングル「センチメンタルピリオド」でメジャーデビュー。2011年5月に発表したシングル「オリオンをなぞる」がアニメ「TIGER & BUNNY」のオープニングテーマに起用され注目を集める。さらに2012年9月には映画「劇場版 TIGER & BUNNY -The Beginning-」の主題歌「リニアブルーを聴きながら」を手がけ、幅広いリスナーを魅了した。2013年2月に4thアルバム「CIDER ROAD」と初のライブDVD「UNISON SQUARE GARDEN ONEMAN TOUR 2012 SPECIAL ~Spring Spring Spring~ at ZEPP TOKYO 2012.04.21」を同時リリース。印象的なメロディと斎藤の独特な歌声、そして圧倒的なライブパフォーマンスが話題を呼んでいる。